葵とキミ

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休憩が終わったのか、瑠依達はグランドの方に戻ろうとしていた。 もちろんグランドも雨で使えないはずだ。 ランニングでもするのだろうか。 葵は水飲み場に向かって歩き出した。 ふいに瑠依が振り返り、葵と目があった。 一瞬のことだったので、誰も気づいていなかったようだ。 夏は誰よりも早く水飲み場に駆け寄り、2つの飲み口から交互に水を飲んだ。 「夏。あんた何で交互に飲んでんの?」 呆れたように葵が聞く。 「そんなの決まってるでしょ。 麻岡君がどっちから飲んだかわかんないから両方飲むの。 うまくいけば間接キスよ~」 嬉しそうに言いながら、夏は水を飲み続ける。 「・・・・・」 夏ってスゴイ。 葵はすこし感心してしまう。 ここまで堂々と好きって気持ちを表現できるのはある意味スゴイ。 葵はどちらかというと好きな人が出来ても、積極的に出来ないタイプだ。 だから、夏みたいな女の子を見るとちょっとだけ羨ましいとも思う。 「はぁ~。生き返る」 水を飲んで、少しだけ元気が戻る。 「もうひと頑張りだね。」 「うん。」 最後にもう一口水を飲んで、葵たちは練習場所に戻っていった。 窓の外を眺めていると、サッカー部が外周を走っていた。 ・・・やっぱりランニングなんだ。 大変だぁ・・。 ぼんやりと葵が思っていると、顧問の大友先生が戻ってきた。 基本的に大友先生も葵たちと同じメニューをこなしている。 もう30歳過ぎているのに、すごいなぁといつも感心する。 「よし、集合」 大友先生に言われ、みんな集まり整列する。 「それじゃあ、今日は雨も上がったので、外周3周走って終わりにする。」 ・・・・・・。 「えーーーーーー!!!!!」 一瞬の沈黙の後、全員が叫ぶ。 「うるさい!なんだ3周くらい、毎日走ってるだろうが。」 「それはそうですけど、今日は既に階段往復とかいろいろやってて。 今から又3周走るのは、話がちがいますよ。」 部長の木村先輩が言う。 木村先輩は厳しいけれど、しっかりしていて優しい。 いつも葵たち1年生のことをちゃんと見てくれている。 葵は木村先輩みたいになりたいと、こっそり思っていた。
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