875人が本棚に入れています
本棚に追加
休憩が終わったのか、瑠依達はグランドの方に戻ろうとしていた。
もちろんグランドも雨で使えないはずだ。
ランニングでもするのだろうか。
葵は水飲み場に向かって歩き出した。
ふいに瑠依が振り返り、葵と目があった。
一瞬のことだったので、誰も気づいていなかったようだ。
夏は誰よりも早く水飲み場に駆け寄り、2つの飲み口から交互に水を飲んだ。
「夏。あんた何で交互に飲んでんの?」
呆れたように葵が聞く。
「そんなの決まってるでしょ。
麻岡君がどっちから飲んだかわかんないから両方飲むの。
うまくいけば間接キスよ~」
嬉しそうに言いながら、夏は水を飲み続ける。
「・・・・・」
夏ってスゴイ。
葵はすこし感心してしまう。
ここまで堂々と好きって気持ちを表現できるのはある意味スゴイ。
葵はどちらかというと好きな人が出来ても、積極的に出来ないタイプだ。
だから、夏みたいな女の子を見るとちょっとだけ羨ましいとも思う。
「はぁ~。生き返る」
水を飲んで、少しだけ元気が戻る。
「もうひと頑張りだね。」
「うん。」
最後にもう一口水を飲んで、葵たちは練習場所に戻っていった。
窓の外を眺めていると、サッカー部が外周を走っていた。
・・・やっぱりランニングなんだ。
大変だぁ・・。
ぼんやりと葵が思っていると、顧問の大友先生が戻ってきた。
基本的に大友先生も葵たちと同じメニューをこなしている。
もう30歳過ぎているのに、すごいなぁといつも感心する。
「よし、集合」
大友先生に言われ、みんな集まり整列する。
「それじゃあ、今日は雨も上がったので、外周3周走って終わりにする。」
・・・・・・。
「えーーーーーー!!!!!」
一瞬の沈黙の後、全員が叫ぶ。
「うるさい!なんだ3周くらい、毎日走ってるだろうが。」
「それはそうですけど、今日は既に階段往復とかいろいろやってて。
今から又3周走るのは、話がちがいますよ。」
部長の木村先輩が言う。
木村先輩は厳しいけれど、しっかりしていて優しい。
いつも葵たち1年生のことをちゃんと見てくれている。
葵は木村先輩みたいになりたいと、こっそり思っていた。
最初のコメントを投稿しよう!