葵とキミ

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「何弱気なこと言ってるんだ。 今まで毎日トレーニングして筋力つけてきただろうが。 お前らなら今からあと3周走る体力もしっかりついとる。大丈夫だ。 それに、明日から土曜で休みだろ。 少しくらい疲れても大丈夫だ。」 「えー。」 みんな泣きそうになる。 「タイム計るからな。 1周5分。15分以内にゴール出来なかったヤツは来週から毎日外周5周だ。」 「そんな!!」 突然の大友先生の言葉に、みんな呆然とする。 「おまえらな。中体連まであと1ヶ月もないんだぞ。 本気で勝ちたいと思うなら、今頑張って基礎体力をつけることが重要なんだ。 強くなりたくないヤツは走らなくて良いぞ。 上を目指したいヤツだけ、5分後に校門前に集合。良いな。」 そういって大友先生は職員室に戻っていった。 しばらくの沈黙の後、木村先輩がみんなの方を見て言った。 「・・・・行くしかないね。」 「うん。ここまで来たら、3周くらいいけるでしょ。」 副部長の前田先輩が続く。 「はい。」 2人に後押しされるように部員が次々と返事をする。 葵と真白も、ここで止めるなんて、考えられない。 絶対にうまくなりたい。 そう強く思い、大きく返事をした。 最初は、スコート姿に憧れて入部しただけだったが、いつのまにかテニスがしたい。 先輩達みたいに上手くなりたい。その思いが強くなっていた。 葵は自分でも気づかないうちに、テニスの魅力にはまってしまっていたようだ。 部員みんなで校門前に向かう。 校門にはすでに大友先生が待ちかまえていた。 全員が来たことに嬉しそうな表情をする。 「よし。良く来たなみんな。 さすが俺のテニス部だ。 じゃあ、良いか。今から3周。全員で15分以内にゴールするんだ。 お前らなら出来る。ガンバレ。」 「はい。」 大友先生の言葉に頷き、全員でスタートする。 すでに体はクタクタだ。 でも、みんなが頑張っている。そう思うことで葵は強くなれた。 1周、2周。3周目に入ったところで、みんなの速度にばらつきが出始めた。 最初は固まって走っていたが、段々とばらばらになってくる。 葵は真白と一緒に先頭の方を走っていた。
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