‐杏里‐

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「ん…んあ」 カーテンから差し込む朝日で目を覚ます。 徐に時計を見る。 「まだ7時か…」 今日は土曜日。 起き上がり、背伸びをする。 「蘭?起きてるならご飯食べちゃって」 下の階からお母さんの呼ぶ声がする。 「はーい」 そう返事をして机に置いてある携帯を手にとる。 「…」 蘭は携帯を持ち下に降りた。 蘭は私立高校に通う17歳。 いまどきどこにでもいる普通の女子高生だ。 「今日は早いのね。土曜日なのに。」 「目が覚めただけだよ」 母の郁恵がエプロンを外しながら朝食が用意されたテーブルに着く。 「あれ、お父さんは?」 「仕事よ。昨日から帰ってないわ」 「またかよ」 「仕方ないでしょ。刑事なんだから。」 蘭の父は市内の警察署に勤める刑事だ。忙しいためかほぼ家にいない。 「三人でご飯食べたのっていつだっけ?」 蘭がテレビを見ながら呟いた 「一ヶ月前かしら。覚えてないわ。」 母はご飯を食べながら返事をした。 「そういえば明美ちゃん、一昨日から行方不明なんだったね。ニュースでやってたわ」 「そうだね~」 「ちゃんと聞いてるの?」 「聞いてるよ!」 「どこに行ったんだろうね。変な事件に巻き込まれてないといいけどねぇ」 母は心配そうにテレビを見ながら言った テレビは明美が行方不明になったというニュースが流れていた。
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