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「技術班主任…
小倉千夏!
あなたを逮捕します!」
「えっ、なんでだよ!?」
若葉がカムイと内通していた裏切り者と睨んだのは、特殊強化服の整備や調整に深く携わり、デックシステムにも関わった事のある小倉千夏であった。
歳を重ねてはいるが、若い頃の面影もあり、気の強い所も変わらないようである。
20年ほど前に結婚したが、すぐに別れてしまったらしい。
「特殊強化服のデータくらい、誰でも閲覧出来るだろうが!
大体、なんであたしがわざわざお前たちの手をわずらわせるようなマネを!」
思いっきり反発する千夏の態度に戦慄を覚えた晃作がフォローした。
「そ…そうだよな。
若葉姐さん、小倉主任じゃないと思うぜ。」
「姐さんじゃない、二尉と呼べ!」
若葉にも怒鳴られる晃作…
二人の強烈な個性を持つ女性に、上官である塚地も気圧されてしまっていた。
汗まみれになりながらも塚地は言った。
「技術班に関わりがある人物で、犯罪組織に特殊強化服のデータを渡して、メリットがある人物…
となると経理の者かもな。」
その言葉に千夏はハッとした。
「3ヶ月前に辞めたウチの技術者がいる。
そいつは、24、5年前の事件の時に親父のとばっちりを食って、エリートコースから落ちこぼれた奴なんだが…」
「名前は?!」
塚地の問いに千夏が答えた。
その名は…
「百瀬だ。
ペーシェンスの乱で死んだ百瀬中将の息子、百瀬誠吉だ!」
「百瀬?!」
一同は声を揃えて驚いた。
かつて万丈博士と共謀し、国防軍をひっくり返そうと企てた百瀬中将。
その息子である百瀬誠吉が父の仇を討とうと虎視眈々と機会を伺っていたのだろうか。
それとも、エリートコースから転落した逆恨みからなのか…
結局、カムイの残党らしき者たちも現れる事なく、この事件は収束していた。
そして、当然の如く国防軍から指名手配されていた百瀬誠吉は…
数日後、ズタズタに切り裂かれた遺体の状態で発見された。
つづく
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