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「すみませんでした。ぼーっとしていて……」
その子は可愛らしくはにかむ。そりゃそんな暑苦しい服を着てりゃそうだろう、とも言えなくなる。
「こっちこそすまないね。んじゃ、失礼するよ」
脇目も振らずに立ち去ろうとすると、少女が呼び止めた。
「あの、すいません。できればこれを貰ってください。せめても罪滅ぼしに」
少女が掌で包み、渡したのはアクセサリーの様な御守りだった。商売に関係のないものは持たない主義だったが、ドロップは甘んじてそれを施された。
「それじゃ、改めて」
「はい」
ドロップはローブの少女を見送ると、近場の酒場へと足を運んだ。
石造りの建物は、翳りのお陰で中に入ると少しばかりひんやりとした空気を感じる。
酒場には大抵サボタージュに身を潜める雇われ商人や、行商人などがいる。しかしドロップが必要としているのはそういったものではなく、土地を貸し出すいわば地貸しを探しているのだ。
彼女は一回、二回と周りを見渡すと、グラスを傾ける太めの男へとつかつかと近寄った。
それに気付いた男がドロップを見上げる。
「どうしたい嬢ちゃん。こんなとこで遊んでちゃあぶないよ、危ないからね。それとも、おじさんとアブないことしたいのかな?」
男が下品に笑う。
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