第三章・襲来

2/5
前へ
/58ページ
次へ
今日は、弥勒様も犬夜叉様も、もう一個山を超えた村に妖怪退治に行った。なんでも奈落がいなくなってから、それまで息を潜めてた妖怪がこれ見よがしに暴れているんだって言っていた。それは駄目な事だけど、弥勒様は、たいしたもうけだ、って言って少し嬉しそうだった。 あまり分からなかったから珊瑚様に聞いたら、困った顔して笑ってた。その後に他愛もない話をしていたら楓様に呼ばれたからさようならを言って戻った。戻ってる最中に、珊瑚様の事を思い出す。話してる時、ちょっと膨れて目立ってきたお腹を優しい愛しそうな手付きで撫でていた。その時の眼差しが、おっかあを思い出させるよな穏やかな深い優しい瞳だったから。 今更、おっかあを思い出すなんて、恋しくなるなんて、どうしたんだろう。 ああ、今まで殺生丸様が側にいてくれたからだ。阿吽も邪見様もいてくれたから、寂しくなかったんだ。 「りん、村の人に作物を貰ったよ 運ぶのを手伝ってくれないか?」 はっと我に返って、すぐさま返事をしておっきな籠を背負った。意外にも重たくなくて、何が入ってるのだろうと思って後ろを見たら瓜が2、3個入っている。 「りんね、瓜すきだよ」 美味しく熟れてそうな瓜はきっと甘いだろうな。早く食べたいな。足取りが軽くなって歩いていく。でも、籠の中の瓜が傷つかないようにちょっと気を使いながら。 「りん、そんなに慌てる でないぞ」 楓様はそう言ってりんの右手を握ってくれた。手をつないで、帰り道を歩く。 今は夕暮れで、鳥達は鳴きながら巣に帰っている。村の人達も畑から家に戻っていって、辺りは少し鳥の鳴き声以外は静かだった。
/58ページ

最初のコメントを投稿しよう!

346人が本棚に入れています
本棚に追加