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殺生丸さま、りんね、
また来るって言葉を信じて、その言葉を胸に待ち続けているよ。
楓様と住む事になった。楓様と住む事が嫌なわけじゃない。おばあちゃんみたいで、優しいし、嫌なわけない。でも、殺生丸様がいない。いつものお留守番ってわけじゃない。もう、殺生丸様の後ろを歩いていく事がないんだって。もう、邪見様にお小言いわれないんだなって。そう思うと胸が苦しくなって、凄い辛くなって何回も泣きそうになったこど、隣にいる楓様に心配かけちゃうかもしれないから頑張って耐えていた。
それでも、やっぱり、寂しくて、心がポッカリ空いたみたいなのが我慢しきれなくなって、楓様に分からないように寝る前に声を噛みしめて泣いた。
朝、目が真っ赤になっていたから、早く起きて、近くの川に顔を洗いにいった。凄く良い天気で、澄んだ空気が潤いを与えてくれる中、空を見上げた。
空を見上げるのはお留守番していた時の癖であった。ふわりと風のように降り立つあの妖に真っ先、おかえりが言いたくて、何回も何回もまだかなまだかなと見上げていた。
そんな思考を除くように左右に首を振る。川に写った自分の顔は泣きそうで情けない顔だったから、ピシャリと頬を叩いて冷たい川の水を浴びた。
それでも泣きそうな顔は元に戻らなかったから気晴らしにそこら辺を歩いていたら、木々がざわりとした。
思わず、辺りを見渡してみる。いつも殺生丸様が帰ってきた時、木々や花々がざわりとするのを思い出したから。もしかしたら、来てくれたのかもしれない。走って、森の方へ走っていく。
でも行けども行けども、あの長い銀髪や豊かな毛皮が見当たらない。それどころか、人の気配さえしない。
また目頭が熱くなってきた。
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