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「真希先輩は、紗綾先輩好きなんですか」
「え?」
紗綾先輩がいないサークルの飲み会。
私は『酔った勢い』を使って先輩に尋ねる。
実際はそこまで酔ってたわけでもないし、先輩もあまりだったらしく、普通に苦笑してみせた。
女の子から浴びる視線なんか、気にしない。
「真夜ちゃん」
「真夜でいいです」
「…真夜、えっと」
「真夜的、紗綾先輩も可愛いけど、二人ともタイプが違うなって思ったんです。二人がいちゃいちゃみたいな、カップルらしいことをしてる所も見たことないですし」
……今思えば、こんな僻みったらしい事なんて、恥ずかしくてしょうがない。
でもこの時は、私なりに精一杯トゲのある言葉を探していた。
「べたべたくっついてるのがカップルとは限らないよ。俺と紗綾もまあ長いから、そうやってくっつく必要があんまないかな」
「…必要……」
「もうお互い遠慮とか、無理にカップルらしく振る舞う必要もなくなったってこと」
私は何をしているんだろう。
私は、紗綾先輩を通してでしか、真希先輩を見ることが出来ない。
絶対。
二人はもう恋を通り越えた信頼関係にまで行ってる。
私に引き裂く程の力なんてない。
お互い信じ合ってる人の所に割り込む私が、全員の敵を作るだけだ。
「……難しいです」
「真夜ちゃんも恋すれば解るよ。それ以上も解る。」
本当に綺麗な笑顔が自分に向けられる。
これは私にだけど、でも違う。
結局、真夜ちゃんだし。
その笑顔を見せて欲しいんじゃない。
それ以上の───無理だけど、解ってるけど、紗綾先輩に向けられるような───……
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