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「……なんでなくの?」
「それはね?ムーン君が泣かないから、僕が代わりに泣くんだよ」
カナルは優しくそう言ってムーンの頭を撫でた。
動くことの出来ないムーンは仕方なくカナルの手を受け入れる。
それはどこか暖かくて心地の良いものだ。
「ムーン君の傷が癒えるまでいつまでもここにいて良いからね……」
「……」
(きずがなおるまで……)
ムーンの体が淡く白く光だす。
パァァァアアア
少し苦しそうに表情を歪めたが、すぐに無表情に戻る。
「……なおった…」
「えっ?」
光が収まるのと同時に、ムーンは体を動かした。
傷だらけだったのが綺麗に無くなっているのだ。
そしてそのまま部屋から出ていこうとするムーンをカナルは引き止める。
「今のは魔法なのかい?」
「……たぶん」
ムーンは魔法を教わった事がないが、いつも虐げられてきた体を直す為に自然と使えるようになっていたのだ。
どんなに体が傷ついても誰も癒してはくれなかったから。
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