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「……だれ」
「驚かないの?……まぁいいか。僕は君を森で見つけて介抱してたんだよ」
ムーンは驚く事も無く、男を見ずにボソッと声を出す。
男は男でそんなムーンに驚きながらも、優し気に微笑んだ。
「どうしてあんな所に居たんだい?」
「……だれ」
ムーンは男の質問を無視し、先程と同じ事を繰り返す。
「あぁ!自己紹介がまだだったね。僕はカナル=クルーディア、君は?」
「……ムーン」
ムーンは渋々といった感じに、カナルという男に答えた。
「ムーン……いい名前だね。それより何であんな所に?お父さんとお母さんは?」
「……ば……のに」
カナルはよく聞こえなかったので、ムーンの方へ耳を傾ける。
「しねばいいのに……」
ムーンは一切カナルを見ずに、遠い瞳で天井の方を向いている。
その瞳を何を想っているのか、どこまでも虚無感に満ちていた。
それは幼い子供の瞳とは違うものだ。
「駄目だよ……そんな悲しい事を言っては……」
カナルはムーンの言葉に悲しげに瞳を伏せた。
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