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「……そう、でもおまえにはカンケイない」
ムーンはチラッとカナルを見てそう言う。
「……そうだね、ごめんよ。……ところでどうしてあんな森の中にいたんだい?」
「カンケイない」
今度は一切カナルを見ずに、ムーンは言った。
寂しそうに、そしてどこか困ったような表情でカナルは微笑む。
「お家は分かる?」
「……ない、すてられたから」
カナルの質問に、ムーンは無表情で答えた。
悲しさも
寂しさも
辛さも
憎しみも
全てを感じさせないような無表情で。
「辛かったよね……」
「……べつに」
カナルはハラハラと涙を流しながらムーンを見つめる。
ムーンは少し怪訝そうな表情をしたが、すぐに無表情になる。
(なんでないているんだろう……)
ムーンには分からない。
どうして泣いているのか、
どうして泣く必要があるのか、
どうして泣く理由があるのか、
何もわからないし、知らないのだ。
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