ⅠムーンSideStory

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「きず……なおったからでていく」 そう言って部屋から出ていこうとするムーンをカナルは慌てて止めた。 「そういう意味じゃないんだ!」 「……?」 どこか寂しそうに瞳を伏せるカナルに、ムーンは足を止め振り返る。 「ムーン君の…………‘心の傷’……が治るまで」 「……」 ムーンは少し瞳を見開き、不思議そうに首を傾げた。 そして小さく微笑む。 「こころ?へんだよ。ぼくはそんなものナイもん」 「……、っ」 初めて見せたムーンの笑顔は、あまりにも痛々しくカナルには見えた。 カナルは絶句するが、すぐに微笑みムーンを抱きしめる。 「それじゃ、僕と一緒に心を取り戻そう。失ってしまったのなら探せばいい」 「……」 何も言わないムーンにカナルは微笑み、赤い瞳を見つめた。 「だからいつまでも此処にいても良いんだよ」 「……」 ムーンは何も言わないが、その瞳からは一筋の涙が零れ落ちた。  
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