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「結婚してください!!」
それは女の子なら誰もが憧れる言葉だろう。
いきなりのプロポーズ、しかも相手はお金持ちとくれば誰もがとびつくんじゃなかろうか。
ただし、相手が……
「ボク、何歳?」
「10歳」
…………目の前には10歳の子供(しかも初対面)
その手には真っ赤なバラ。
空からうるさいモーター音。
見上げれば一台の低空飛行を続けるヘリコプター。
そこからメイド服を着た女の人が、ひらひらとバラの花びらを降らしてる。
……シュールだ、ものすっごいシュールだ。
とりあえず、私はペコリと男の子に頭を下げ
「ごめんなさい」
「ガーーーン!」
それが7年前のこと。
18歳、高校生活最後の夏のことだった。
あの衝撃的な夏から早7年。
私は高校卒業後、短大を出て、近くの中小企業で事務として雇われていた。
日々、仕事に追われ、上司やお得意先に怒鳴られる。
いっそやめようかと思ったことも一度や二度じゃないけど、現実問題、生活できなくなるのは目に見えているから止められない。
この不景気の時代、雇われただけでも儲けものと思わないと……。
そして今日も、サービス残業で疲れた身体に鞭打って家に帰る途中……。
ああ、ふらふらするぅ……。
「大丈夫か?」
ふらりとよろけた身体を誰かが受け止めてくれた。
声の感じから、17,8歳ぐらいの男の子らしい。
「すいません、ありがとうございます」
ぺこりと頭を下げ、少年から体を放そうとするが、ぐいっと引かれ
「やっと見つけた」
ぎゅっと抱きしめられ、耳元でささやかれ、体が硬直した一瞬後……
「きっ、キャアアアアアアアアッ!!!!!!」
「うわぁっ!!」
私はその相手を思いっきり殴り飛ばして逃げだした。
ちっ、痴漢だ!
人生はじめての痴漢だっ!!
混乱しながらもそんなことを考えながら急いで家路につく。
殴り飛ばした相手が、18歳の時に、プロポーズしてきた10歳だった男の子だとは気付きもせずに……。
それから、その子に再度プロポーズを受けたりしたのは、また別のお話。
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