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市場は今日も賑やかだ。店先のカボチャが客の注目を引いている。急がねば、王がお待ちかねだ。
城に設けられた会議場にはすでに王と大臣、その他有力貴族が揃っていた。私だけ遅刻か…時計の針はちょうど定刻を示した。
「ハルト卿、遅刻は困りますな」と財政を司る大臣、ケンパドゥレイに詰られた。正確には遅刻でないのだが言い返すのも野暮と言うものだ。今日は予算の審議に決着がつく。皆張り切って早めに来たのだろう。
ハルト卿、そう私はフェポル・メリニ・ハルト。私の仕事は農村や漁港の取り締まり。まだ35歳だが父が有能な医者で王の痔を治したことで一家が気に入られ、凡庸な私でも若くして議会に参加出来るまでになった。痔の下りは一家と王と側近しか知らない。ケンパドゥレイもその中の一人だ。
予算は例年より抑えられた。近年多発する海賊行為に対する防衛費に重きを置かれたのだ。ケンパドゥレイは増税を提案したが私は反対だ。大体海賊だって疑わしい。この間だって見間違えで漁船だったじゃないか。その分の予算を民に還元すべきなのに…
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