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生温い風が吹き抜ける。
いつもだったら心地好さに瞼を落としかけるところだが、今落としたら違う何かまで落としそうだから止めておこう。
視界を遮るものもなく、ただぼぅっと目線を泳がせてゆく。
負傷兵、瓦礫、魔力のかけら…
惨劇といえばそうだが、どうなんだろう。戦争自体が惨劇なのに。
自国の兵の勝鬨が聞こえる最中、敵国の兵の呻きが聞こえる。
俺達は死ねない。
自ら死を選ばない限りは。
彼らはこの敗戦により死を選ぶのだろうか。
それとも第三国につくだろうか。
それとも、願わくば、俺達と同じ立場で戦ってくれるだろうか。
虫の良い話だとは思う。
でもどの国も、全員が、この虫の良い話に辿り着くため血を流す。
なんだ、皆加害者で、被害者か。
どんどん深まる思想を重ねるうちに、後ろから声をかけられる。
振り替えれば、同胞が満面の笑みで「上司の酒をかっさらってこよう」と誘われる。
俺は薄く笑い「俺が行くまでに上物持ってくんじゃねぇぞ」と言い残し、この崩れた城のどこかにいるはずの旧友を探しに踵を返した。
(俺を恨んでもいいよ)
でも同じ未来を見ませんか?
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