序章

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       茜射す並木道、死に逝く黒猫に手を合わせた。  暦に逆らう寒さの中、抱いたのは儚い温もり。  掲げたグラスに注がれた一時の安心。  夜明け前の空に還らぬ時を求めても、いずれは明ける空、閉じた瞼が開かぬ様に。  そうして、君への唄も凍り付いていくのでしょう。  例え事態が変わらなくとも、恥ずかしいくらいに、貴女に夢中だ。誰よりも、何よりも。そして、きっとこれからも。  喪失という絵の具だけで、全てを描くなんて、もうごめんだから。  
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