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「!」
斎藤さんは目を見開いたまま、固まった。
「斎藤さんが私を引っ張ってくれなかったら私は遅刻でした!斎藤さんのおかげです!ありがとうございました!」
「‥‥‥別にお前のためではない。礼など、いらん。」
笑顔でお礼をいったものの、斎藤さんはそう冷たく言い、私に背を向けて校舎へ向かって歩いていく。
「あ‥‥‥。」
「あはははっ!一くんってば‥照れちゃって‥あはははっ!」
シュンとして斎藤さんの後ろ姿を見ていた私の耳に入ってくる笑い声。
ふと隣をみると私がぶつかってしまった人が大笑いしていた。
「まったく、一は照れ屋だよねー!照れ隠しで冷たいセリフ吐いて歩いていっちゃうし。せっかく僕の可愛い妹が笑顔だったのに。」
薫兄がニヤニヤしながら去ってゆく斎藤さんを見ている。
‥照れ隠し?
左にはふぅと息を吐き出しニヤニヤした薫兄が
右には未だに笑い続けている先程ぶつかってしまった人が斎藤さんの後ろ姿を見ている。
「あははははははははは、ゲホッゲホッ‥あははははははははは!!」
‥むせるほど!?
どんだけ笑ってんだこの人!!!
そんな2人を不思議に思いながらも私もすっかり遠くなった斎藤さんを見ると、あることに気が付いた。
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