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蝉香と風香は珠ねぇに会ったことがない。
珠ねぇは俺が小学三年生のとき転校したのだ。
実家が忙しいとかなんとか。
今回は反対を押し切ってこっちに来ることになったらしい。
…俺も心配だ。だって最後に会ったのお別れのときだぜ?
今でもぼんやりと思い出す、あのお別れの日。
─── きっと、きっと帰ってくるから!…そのときは『 』からね!約束だよ… ───
(…あれ?約束ってなんだっけ?思いだせない…)
「また考え事ですか、おにぃさま」
ふと我に返り、
「ごめんごめん。大丈夫だよ、珠ねぇ優しいし。安心しろ」
風香は目を細め、微笑んだ。
(……タエラレマセン)
風香の手を掴んで引き寄せ、優しく抱きしめた。
「わふっ、どうしたんですか、おにぃさま?」
胸のなかから顔をひょこりとあげ、頭を傾げる。
「…イヤか?」
首を振り、
「イヤなわけないです…風香は幸せです…」
頬を染めながら呟く。
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