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遅い時間だったので、居酒屋しか開いていなかった。
会社でいつも行く『吉十』という居酒屋さん。
平日の午後11時だと言うのに、結構にぎわっている。
歓迎会かな?
やたらと盛り上がった一団の声が押し込められた空間の向こうに広がっていた。
微妙に仕切られた4人席に座り、適当に料理を頼んで、カクテルを口にする。
目の前に座る枝谷くんと、その横に鎮座する大きな黒い物。
ずっと気になっていたみどりが「それ何?」と言うのと同じタイミングで枝谷くんが口を開いた。
「みどりさんさぁ、自分で自分の首を絞めるのやめなよ」
枝谷くんはみどりの声が聞こえていなかったのか、開口一番にそう説教した。
まさか、枝谷くんにそんなことを言われると思っていなかったので、みどりは思わず眉をしかめた。
年下の、しかも後輩になんでそんな知ったような口を利かれなきゃなんないのか。
正直、仕事に関しては枝谷くんよりもしっかりとやってるつもりだ。
「アンタ、会社で猫かぶってたわけ?」
「関係ないじゃん。ってか、僕の話聞いてる?」
いつもの枝谷くんとは全く違う。
「あのね、あなたに言われたくない」
枝谷くんは、焼酎を一気に飲むと、店員を呼んでおかわりした。
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