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「なんだ、アルケインか」
ちょっと酔ったなぁ、なんて思いながら軍の貯蔵庫でぼんやり酒瓶を空けていたら誰かの足音がした。開いたドアから自称お洒落な仮面がひょっこり顔を覗かせた。相変わらず可笑しな格好だと思う。だってまるで貴族か吸血鬼みたいで──まぁ、私はアルケインが“何”なのかとか知らないから別にツッコむ気は無いけど、普通の人間だったらちょっとセンスを疑う。羽根っていうかリボンが付いてるしそのリボンもスカーフみたいだしイヤリングは派手だし、最初見た時はなんて言うか、そっち系の人かと思った。「なんだとはなんですか」とちょっと拗ねたように言いながら前まで歩いてくる。
「飲んでますね」
「飲んでるよ、だって酔いたいから」
「何かあったんですか」
「何かあったんだよ」
別に、大したことじゃない。誰にでもあることだ。一人で酔い潰れたいような悲しいことがあるなんて。
「アルケインはどうしたの」
「僕はワインを取りに来たんです」
「あぁ、だろうね」
酒が貯蔵してある場所に来る将軍なんてアルケイン以外にいないと思う。見たこと無いけど、ネフィリム様もフェルトもメリーメリーだって、わざわざ自分で来るなんてことする訳無い。誰かに取って来させるだろう。だって、偉いんだから。
「どれがいいでしょうね」
「気分に寄るよ」
「酔いたいんですけど」
「アルケインが?」
意外だ。全然酔わなそうなのに。いや、知らないけど。
「何かあったの?」
「いえ君がね、」
そんな風だから、とアルケインが言う。私がそんな風だからって一体なんだって言うんだ。アルケインには関係無い、関係無いんだけど。
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