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「……人の話を聞かない子だな」
「アルケイン、様」
見上げたら上下逆転したアルケイン様の顔があった。仮面の下から覗く肌が白くて、陶器みたいでぞくっとした。
「まだ話が途中だったろう」
「す──すみませんっ!」
将軍様が話してるのに途中でいなくなるなんて失礼過ぎる。処罰を受けても仕方ないぐらいの不義だ。びくっとして離れようとしたら、また後ろに引かれてすっぽりとアルケイン様の腕に収まった。
「あ、アルケイン、様」
「ご褒美をあげようとしたんだ」
「ご褒美、ですか」
献上したものに何か見返りを求めるなんてことは無い。だからその言葉にぽかんとしてしまう。最もアルケイン様との距離が近過ぎてそれどころでは無いんだけれど。ただ心臓の音が五月蝿くて聞こえてしまわないか心配だった。
「ご褒美になる筈だけど」
一体何を──と口を開く前に、アルケイン様の顔が一気に近付いたから私は息をのむ。やがて額にひんやりとやわらかい感触がして、また離れていった。何をされたか理解すると同時に額だけが私とは別の生き物みたいに熱に浮かされてしまって困った。真っ赤になって口をぱくぱくさせる私に、だって君は、とアルケイン様が笑っていた。
─────
僕のことが好きだろう。(あ、あ、あ、ある、ある、あ、アルケイン様…!)(とりあえず、僕に対してどもる癖を直しなさい)
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