不死者の愛し方(アルケイン)

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「僕には効かないよ、こんなもの」 腹から背に抜けた剣をつう、と指でなぞりながらアルケインが笑う。にたりと笑いながら、相手に手を伸ばす。血塗れになってもものともしないその姿に敵兵が恐怖を浮かべて後退った。自分が戦っている相手に人間ではないものがいるなんて、想像はしてもきっと受け入れがたいものだ。声にならない悲鳴を上げながら逃げ出し、その辺の石に躓いて地面に転がる。アルケインは笑みを浮かべたままその敵に近付いていき、歩きながら腹に刺さっていた剣を抜いて、這うようにしていた惨めなそれに──突き立てた。ぐがっと鈍い断末魔の悲鳴を響かせて、ぴくりと指先を震わせてから彼は息絶えた。そして暗いマントを叩きながら、アルケインが私を振り返り、 「痛た…大丈夫です?僕の血がかかってしまってないですか?」 腹に穴を開けたまま、そう平然と聞くのだった。 「っ──の馬鹿!」 「ぐへっ」 差し伸べられた手を握らず、そのまま顔面をぶん殴る。腰を曲げていたからかバランスを崩してそのまま後ろに二回転くらい転がった。石やら何やらにぶつかって、いたっとかあうっとか言ってたけど知らない。仰向けに倒れたところを上に乗った。胸の真ん中に傷が見えて、それは普通なら、私なら死んでいる場所の傷──いや、今まさに、私は死ぬところだった。そこへアルケインが来て、代わりにその傷を受けたのだ。私の身代わりになったのだ。 「なんでっ、なんで、っそんなことしないで!しないでよっ!」 喚くように私は怒る。アルケインは死なないけど、知ってるけど、それでも嫌だった。私のせいでアルケインが傷付くのも、アルケインより弱いからって守られるのもまっぴらごめんだ。自分勝手だけどそんなの悔しくてたまらない。だって、と彼は言う。少し拗ねたように、子供みたいに。  
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