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「あ、アタシのことはいいから早くしましょ!!異界の扉に行くんでしょ。遅れるわけにはいかないじゃない!!」
顔を赤らめ、必死に顔の前で手を交差させながらあわててマヒロが否定している。
「そんなんで風邪引かれましたー、なんて言ったら俺が罪悪感を感じるから迷惑だ!!」
「風邪じゃないわよ、このバカ!!」
そのまましばらく不毛な言い合いを繰り返すと、それを面白そうに見ていたクロノはようやく仲介に入ろうとしてニヤニヤしながら一言
「それじゃあ行こうか。お二人さん」
と言うと二人を置いて、一人暗闇の中、異界の扉に向けて歩き始めた。
「あ、ちょっと待てよ。クロノ!! 行くなら別にいいけどよ、本当にマヒロを連れていっていいのかよ?」
「いいんだよ、僕の見る限り風邪ってわけじゃないしね。ただ盲目なだけだよ。」
「いらないことを言うな!!」
クレタの後をついて行くために、マヒロはやや早歩きで歩き始めると余計なことを言ったクロノに拳を振り当てた。
クレタの悲鳴が聞こえるが特に気にせず、それをさらに追うようにクレタは魔動バイクのエンジンを切ると、ゆっくりと魔動バイクを押しながら、クロノの後ろを歩き始めた。
そしてしばらく歩き続けること数分、異界の扉の目の前にまで来ると、当然のことながら見張りの兵士に見つかった。
「オイ、キサマ等一体そこで何をしている?」
「いやだなぁ、指令所の通りに扉を通りに来たんですよ。
」
クロノは話す、相手をあざ笑うかのように半分しか見せていないその顔で。
「何? キサマ一体何を言って」
クロノは、不信感から問い詰めてくる兵士の発言を聞き流す、そして言う。
「だから黙ってソコを通してください。」
クロノは言いながら、クレタとマヒロには見えないように仮面を僅かにずらした。
瞬間、兵士は黙り、無言で道を明ける。
マヒロは気のせいか、その時相手の目から感情が抜け落ちていた気がした。
「へぇ、でも本当に通してくれるのね。」
「それはそうだよ、通ることは決まっていたんだ。間違って捕まったら笑い話にもならないさ。
まぁ捕まらないけどね。」
「まぁ確かに当たり前の話だな。というより流石に根拠もなく、ここまで馬鹿なマネはしねぇっての。
する奴がいたら相当な馬鹿だな。」
マヒロは面白くないようで地面に転がっていた石を軽く蹴り飛ばした。
蹴り飛ばした石が塵に帰ったことに二人が恐怖した。
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