るんるん春るんるん

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――春。 冬の長く厳しい寒さは遠ざかり、暖かくなりはじめる。様々な生物が盛りはじめる季節。 妖怪の山の反対側、迷いの竹林と呼ばれる竹の迷宮のそのまた奥に、永遠亭がある。 「待て、わ、分かった、話し合おうぜ? 仕事だっていうのは解るが、労働者としてその内容を知ろうとするのは当然だろ?」 この必死に抵抗をしているのが、人間辞めた蓬莱人、麻井空人である。 「労働者? 違うわね、あなたは実験台よ?」 この慈悲もない言葉を吐いた女性、赤と青のナース服、銀髪を裏で三編みにしてある、八意永琳という、薬師兼医者である。 今、新薬を空人で試そうとしているのである。 これまで数十もの薬をその身体で実験された空人。その効果の恐ろしさは熟知している。 例を挙げれば、猫の身体の一部が生えたり、性別が変わったり、体が小さくなったり……と、様々である。 「酷っ! 労働組合に訴えてやる!」 「そんなもの無いわ。残念だったわね。」 永琳は笑顔で空人に言う、悪意を込めて。 「ぐう……、輝夜助けてっ!」 「ごめんなさい、空人。私にそんな度胸は無いわ。」 蓬莱山輝夜、あの昔話で名高いかぐや姫である。黒く艶やかな髪に、整った顔、和服を身に纏い少し楽しそうにしている。 「なんだとっ!?」 「はいっ捕まえた、さ、逝くわよ。」 字が違うって? 違わないよ絶対。
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