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ほんの少し昔のこと。
金色の髪と碧い瞳の一人の少女がいた。
少女は、なにも持っていなかった。
たった2つ、美しい歌声と、優しい恋人を除いて。
少女は、その2つをとても大事にしていた。
少女の歌は、明るく、優しく、どこまでも透明だった。
周りの人たちを、その歌で幸せにしていた。
しかしある日のこと。
突然、少女の恋人が、少女から離れた。
少女は嘆き悲しんだ。
すると、今まで明るかった少女の歌は禍々しいものに変わり、優しい音色も、人々を不安にさせるものとなった。
そして、どこまでも透明だった声は、ローレライの岩の上、船を沈めるほど、深く、暗く、悲しい声になった…。
少女の歌は多くの船人の命を奪った。
少女は悲しんだ。
自分の大好きな歌が、人の命を奪うなんて…と。
少女は、その身に責任を感じ、ローレライの岩の上、ライン川へ飛び降りた。
少女は無事、旅立ったのだろうか。
それともまだ岩にとりついているのだろうか――
ローレライの岩の上、少女の歌が、少女の心を呼び覚ます。
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