102人が本棚に入れています
本棚に追加
/206ページ
少しの間をおいて、
相手はふぅ、とため息を一つ。
そして、流石に
話すには遠いと思ったのか。
ちょいちょいと手招きされ
私は、う…と思いながら
とたとたと近くに寄った。
私が距離半ばに寄り止まると、
やっと相手は口を開いた。
「先程の事だが、お前が思う程
私は、気にしてない。
だから…他に何かあるか?
…仕事が忙しいのでな。
話しはそこそこに
退出して欲しいのだが。」
最低限の声量。
正直、声を張るのも
面倒臭い、といった御様子だ。
相手はまた迷いなく
資料に目を向けた。
(…なんで、かな───)
きっぱりと、整然と、
言い放った『気にしてない』は
私の存在をも指してるようで、
私は何故か勝手に、
悲しい気分になった。
なんでだろう。
思わず…
《…お前なんか…っ……!!!》
「…ぁ……っ」
嗚呼…っ何故、
駄目、駄目だ……!
「は、い…失礼しました…っ」
一礼して、
私はずくさま部屋を出た。
そして、早く遠くに行きたくて
宛もなく駆け出していた。
章,『最悪とはまさに』完
.
最初のコメントを投稿しよう!