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「………」
「………」
そのまましばしの沈黙。
彼は何か考えるように、
その視線はずっと
私を捕らえたまま。
気まずくて、私はただ
うろうろと視線を泳がせていた。
彼が繋ぎ留める左手。
未だ掴まれたままの腕の部分に、
妙に熱を感じるのは何故だろう。
そんな事を思っていると、
「───!…そうだっ、
ねぇ…ちょっと、
こっちに来てみっ…!」
ぐんっ
「…っ!」
また不意に引っ張られる。
突然動かされたものだから
私は前につんのめりながら
彼につられ歩を踏み出す。
「えっ…!?ちょっと…!
ま、まって下さ────!」
私の声など聞こえていないよう。
彼はなぜか笑顔で、
そのまま容赦なく城から遠退き
私が未だ踏み入れた事の無い、
城外敷地へと導いた。
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