入学式、それに……

5/19
前へ
/111ページ
次へ
「なあ、この後何すると思う?」 テオが僕に聞いてくる。この後の予定は黒板にも書いていない。 「何だろうね。前にも「お~い、お前ら~席に着け~」 けだるそうな男性の声が、僕の言葉を遮り教室中に広がる。 その声に反応し、教室の大半の生徒が声の主である先生の方を向いた。 僕は一目見て感じた。『何かがおかしい』 まず、目元に隈があり何故か疲れてる様だ。さらに手には教師が持っていてはいけない物。 簡単に言ってしまえば携帯ゲーム機だ。 「あの人、先生かよ……」 テオはそう呟きながら前を向いて座った。 テオのつぶやきについてだが、僕も同感だ。せめて、あの人が担任で無いことを祈るしかなかった。だが………… 「俺は1―A担任のアデル・ノーランドだ。以後よろしく」 僕の祈りはあっさりと砕かれた。現実なんてこんなものだ。 「これからの予定を話す。話を聞いて無い奴はデコピンの刑な」 何なんだろう、この教師は……きっとクラスメイト全員が思っただろう。 この間にアデル……先生は手に持っていた荷物とゲーム機を教卓に置き、 シャドーデコピンをしてシュ、シュっと音を立てている。
/111ページ

最初のコメントを投稿しよう!

141人が本棚に入れています
本棚に追加