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「あのばか」 あきれ混じりに呟いた言葉は当たり前だが誰にも届かない。 メールの上に打ち込まれたアドレスを押し、iモードを起動させる。 明るい色を規準とした彼の家はごちゃごちゃと様々なものが散らばっていて、まるで彼自身を現しているようにも思えた。 彼の名は坂井 知也という。いわばクラスのムードメーカー的存在で、いつも人の輪の中心にいるような人物だ。 そんな存在が何故私のような日陰ものに進んで関わりたいと思うのか分からない。希少生物を観察しているのか、自分が形成する輪に加わらなければ不満なのか、私にはさっぱり分からない。 ただ一つ分かることがあるとするなら、私は彼が苦手だということだ。薄い壁を張ってもすぐ壊すかよじ登るかして私の領地に堂々と侵入してくる。そんな存在が私は苦手だ。眩しくてくらくらして、目がつぶれそうになる。 だからいつも彼に対して素っ気なく接するのになかなかめげてくれない。 早く私から離れてほしい。でも、離れられたらきっとすごく切なくて悲しい気持ちになる。私は彼に対しての感情を持て余していた。
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