白兎とオオナムジ

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 白兎はあわてて、あぷあぷと水を飲みながらもがくけれども、どうすることもできない。浮きつ沈みつして川口へ流されていくうちに木の枝が流れて来たのでしがみつき、とりついてほっとした。このときからこの川を木の枝川(甲江)という。ほっとはしたものの、そのまま海まで流され、とうとう隠岐の島まで漂って、ようやくかわいた土地にへあがることができた。  やれいのち助かったとそのときはもうそれで、うれしいともありがたいともおもっていたが、しばらく島に暮らしていると、故郷がおもわれてならない。なんとかして帰りたいものだとかんがえた。毎日ぼんやりと海辺に出て思案していたが、ふとおもいついた。そうだ、波間で遊んでいる鰐(鮫)をだましてなんとか帰ろう、それがいい。そこで大声を出して鰐をよんだ。 「どうだ、おれたち兎とおまえたち鰐の仲間と、どっちがおおいかくらべっこしようじゃないか」 「ふうん、そりゃおもしろい。だが…」 鰐は尻尾をばたつかせ、目を丸くしていった。
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