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「(う~……お父様一体何の用だろ)」
ネーヴェは今、長である父親に呼び出されていた。
目の前には族長専用の部屋の扉。
意を決して扉を叩く。
「入りなさい、ネーヴェ」
父親の低い声が耳に届く。
その言葉で扉を開き、族長を前にした時の特別な挨拶を交わした。
父親といえど、ほどんど関わったことのない人。
話したこともあるかないか分からないほどに、"父親"という認識はなく。
姉妹を育ててくれたのはアルマと母親だから当然なのだろうが。
ネーヴェはそんな父親が苦手だった。
もうすぐ10歳になる少女にとって、そういった人間と一人で会うことは恐怖の他ならないわけで。
「(早く終わらないかな……)」とか、呼び出された重大さにも
気付かずに、この状況から逃げることだけを考えていた。
そんな空気の中、族長が口を開く。
「次期族長についての話だ。心して聞きなさい。」
その顔は一族を背負う人間の顔だった。
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