0人が本棚に入れています
本棚に追加
「すみませんがもう勘弁してもらえませんか?」
凛として喋りだそうとしたその声は耐えきれずに少し震えている。
「あ?何だテメェーは?」
「あの、ここを通りかかったときに丁度見えちゃいまして。それくらいにして、解散してくれませんか」
「はぁ?別に俺らは何もしてねぇぞ」
「ちょっとこいつと遊んでただけじゃねぇか。それとも、こいつの代わりにテメェーが相手してくれるんかい?」
理不尽にも程がある。
正直もう逃げ出しちゃいたい。亜希の感情に一切の余裕はみられなくなった。恐らく今、自分の顔も物凄く無表情かもしれないな、ははは。
「いや、俺は喧嘩とかはしない人なのでごめんなさい。……いいから、とにかくそいつを返せよ!」
「あぁ?ウゼェなー。なぁ、こいつもやっちまおうぜ!」
「なっ!?」
一歩後ずさる亜希。
「そうだな。金も持ってそうだし。…おらぁーっ!!」
亜希に向かって不良の一人が殴りかかろうとした。
亜希のいる場所は橋下からやや離れた位置になっているため、今まで橋の影に隠れていた不良は姿を表す形になった。
それに合わせてタイミングよく亜希が言った。
「おーっと暴力は止めてくださぁーいっ!」
わざと大きな声で言う。それでも不良は亜希めがけて突っ込んでくる。
「助けてぇーっ!!」
必死の懇願にも構わず不良は亜希に殴り掛かって顔面に一発お見舞いし、それでもなんとか踏み止まった亜希の胸ぐらを掴んでもう一発殴ろうとしたところで、
「おい、ヤベーって!!」
という仲間の声で殴りかかる寸前で拳を止めた。
「…もういいだろ」
もう一人の不良が、言葉と同時に目線を土手の方へと配り、亜希に殴ろうとした不良をなだめた。
最初のコメントを投稿しよう!