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「わあっ…」
そう感嘆の声を漏らしながらしいなは今までに見たこともない街の門を見上げた
今の今まで里の外を出たことがなかったしいなにとって何を見ても新鮮なわけだが何故だろうか、きっとこんなにも華やかな街や人々はここにしか存在しないのだろうと直感した
辺り見渡せば人、人、人…
しかもその一人一人がお洒落とやらのためか装飾品をあちこちに身に付けていたためこれまた唖然してしまう
暫く街の風景をぼんやりと見つめていたが共にその場に立っていたイガグリが此方を見下ろしそれから一枚の紙を此方に渡してきたのだ
「お前は先に宿へ行っておれ。ワシは陛下と話をしてくるのでな」
「え…で、でも…」
「お前はいずれはワシの後を受け継ぐミズホの頭領となるのだ。今の内からこういった場所に慣れておくのじゃ、良いか?」
「は、い…」
不安の残るまま差し出された紙を受けとる
イガグリはそんな自分を見据え頭に手を置き微笑んだ後、颯爽と王宮へと向かったのだった
(よ、よし…!あ、あたしだって一人で出来るんだ!)
そう自分に言い聞かせ己は己で紙に書かれていた―恐らくは宿の名前だろう―それを頼りに歩きはじめる
宿を探して数分、漸く目的の場所へと辿り着くとほっと安堵の息をつき扉を開ける
始めこそ子供だけだったことに宿の受付人は疑問に思ったのだろう「迷子?」と尋ねてくるため小さく頬を膨らましつつ必死に首を横に振り反論しようとしたがそこでぴたりと動きが止まる
忍者は世間には知られてはいけない存在、そのために無闇に言葉を発してはならないのだ。
言いかけた言葉を慌てて飲み込み「お、お爺ちゃんが先に宿に行ってるようにって…」とだけ紡ぐと受付の女性はにっこりと柔らかい笑みを向けその後はただ「偉いね」と言われるのみ、すんなりと宿の中へ通してくれたのだった
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