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どさっと音をたてベッドへと寝転がる。
初めて見た寝具に多少高揚しつつその上でごろごろと意味もなく転がる、気持ち良い
暫くはそんなことをして楽しんでいたもののやはり時間の問題、徐々に飽きが来てしまうと勢いよく起き上がり窓へと駆け寄る
転がったせいで髪はあちこちに跳ね返ってしまったのだが大して気にはせず少し高いところにある窓を開けすぅっと目一杯に息を吸いつつ街の外を眺める
来た時とは違う場所で見たせいか再び感動が訪れ「もっと高いところで見たい」という思いが沸々と沸き上がってくる
窓の外に顔を出し屋根へ行けるかどうかの確認をすると案の定そう大して難しい構造はしていなかったため口角上げつつ足を乗せると忍者として訓練してきた成果とでも言えるだろう素早い動きで屋根へと辿り着く。
直に触れる風に目を細めながらメルトキオ全土とまではいかないが先程よりもよく見渡せるようになった街並みを一望しただ一言「綺麗…」と溢すのだった
Z side
少しだけ伸びた赤髪を揺らしながら少年は邸を飛び出した
後ろで使用人の制止の声を聞くも決して足を止めることなく進み続ける
―もう飽き飽きだ、こんな生活にも何もかも…
歯を食いしばり拳を強く握りしめながら少年は思う
「何が神子だ…何が天使だ…くそっ!」
抑えきれない怒りを何かにぶつけるわけでもなくただ一人そう溢す
定められた運命なんてものを信じたくなかった、何故自分が、何故自分だったのかとそれだけが己を包む
足を止め顔を上げる
こんなにも青々しく広がる蒼空の中に存在するちっぽけな存在だというのに…
「なんで俺なんかが…」
目を瞑り脳裏に蘇る母の姿を浮かべ、また歯を食いしばる
暫くそうしていたがよく耳を凝らしてみれば何処からか声が聞こえる
辺りを見渡すもそこに人の影はない
なんだ?と訝しむような表情を浮かべてまた上に顔を向けると数m先の建物の屋根から人が落ちてくるではないか
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