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目を見開き慌てて走り出す。どうやら少女らしい、一風変わった服を身に纏っていたがその点には特に何も考えず追い付いたその小柄な身体を抱き止める
「…っと…」
上手く着地すると少女を地面へと下ろしてやる
彼女は何が起こったのかわかっていないといった表情を見せながら己を見つめてくる
「…怪我、ないか?」
「…え?あ、うん…」
「そうか…」
「…」
初対面のせいだろう何と言葉を紡げば良いのか互いに沈黙のままであったが突然彼女が口を開く
「…あの…あ、ありがとう…」
目を左右に動かしながら礼を述べてくる相手に己は目を逆に見開いてしまった
今まで他人に感謝されたことがなかった己にとって「ありがとう」だなどという言葉は理想でしかなかった。それを目の前にいる彼女が何と無しに溢してきたのだ
「い、いや…」
多少居心地悪くなった空間に己はただ一言紡いだのみだったが彼女は続けて口を開く
「…え、っと…あ、あたし藤林しいな!あんたの名前は?」
「え…俺、は…」
「…ゼロス、ゼロス・ワイルダー…」
なあ、これは運命(さだめ)だったのか?
ずっと嫌いだった言葉、でもお前との出会いはもしかしたら運命だったのかもしれないって思うんだ
なあ、しいな…お前はあの時どう思ってた?
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