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―――うたいたい。
俺は閉じていた瞳をゆっくりと開いた。
目の前に広がるのは、見慣れてしまった街の風景。
俺が今いるのは、通っている高校の屋上。
ここの学校は四階建てで、屋上も必然的に高くなる。
そんな高い所から街並みを眺めるのが俺の日課だった。
……学校には一応来ているけど、授業にはほとんど出たためしがない。
放課後になるまでずっと、この立ち入り禁止の屋上で街並みを眺めている。
「………うたいたい」
ポツリと溢した言葉は、ずっと昔から思っていたこと。
歌いたくて、堪らない。
言葉にすればするほど、その欲求は増して行く。
「うたいたいな……」
「じゃ、歌えばいいじゃん」
――――え?
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