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有り得ない程近い距離で聴こえた低く掠れた声に、俺は思わず大きく目を見開いてしまう。
「――――ッ!!!」
それでも声を出さなかったのは、凄い方だと思う。
「あれ?歌わないの?」
俺の耳元で囁く様に訊いてくる、低い声。
その前に、何時の間にこんな近くに来てた?
気配なんて、全然無かったし、それにドアが開いた音も無かったのに。
俺は思わず触れていた金網を強く握り締めた。
その反動で金網が小さく音をたてる。
俺のその様子に気付いたのか、後ろにいる奴はクスリと笑った。
「気持ち良く寝てたんだけどさ、アンタが来てから何か目ェ覚めちゃって。
俺が近付いてるの気付かない位、歌いたいの?」
「……え?」
俺が呟くのと同時に、後ろから気配が消えていく。
俺は恐る恐るソイツの方へ振り向いた。
「あれ?アンタ同じクラスの蒼空君?
何時も教室にいないと思ったら、こんなトコでサボってたんだ?」
「…何で俺のコト知ってんの」
俺に気付くヒトなんていないのに。
―――ちがう。
『俺が居るコトすら気付かない筈なのに。』
「――アンタ、なんなの」
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