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「そんな風に素直に言葉をくれるの、蒼空君が初めてかも」
「え………?」
李久は笑みを浮かべたまま、今度は俺の隣に移動した。
金網に背を預けて、空を仰ぎ見る。
「……李久は、こんな所で何してたの?」
嫌味でも皮肉でも何でもなくて、素直に口から出た言葉。
そして口に出してから気付く。
―――何で俺、ヒトと関わってるんだろう。
今まであんなに自分を消して、殺して、独りだったのに。
なんで、どうして。
「だから言ったろ?俺はココで昼寝してたの。
こんな所で授業受けてもつまらないし」
「…朝から、ずっと?」
「朝一でずっとココに居る。
だからココは俺だけの場所だったんだけど……違ったみたいだな」
そう云うと李久は自分のポケットをゴソゴソとあさり、そして何かを差し出してきた。
「…………?」
「はい、どーぞ」
無言で受け取ったそれは、よく見る飴で。
パッケージに『ミント』って書いてある、棒付きキャンディ。
「俺一杯持ってるから、あげる」
「…ありがと」
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