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受け取った飴を掌の中でくるくると回す。
李久を見れば、いつの間にかもう一本飴を取り出していて、袋を剥いている所だった。
パッケージには『檸檬』と記されている。
俺はもう一度自分の飴に視線を戻すと、深く息を吸った。
「………何か、お礼」
「ん?ナニ?」
李久が飴を口に含みながら、俺の方を見た。
俺が言った事が聞こえなかったみたいで、数回瞬きを繰り返して問掛けてくる。
「飴もらったから…なんか、お礼、しなきゃって」
「………おれい?」
俺が言ったことを反芻して、李久がまた瞬きを繰り返す。
口に含んでいた飴を取り出して、ゆっくりと俺に視線を戻した。
「お礼……って、俺に?してくれんの?」
「…俺に今さっき飴をくれたのは一体ドコの誰になるんだよ………」
俺が冷めた風に言ってやると、「そりゃそうだな」と言って李久がけらけらと笑う。
一通り笑ってから、李久が「それじゃあ」と呟いた。
「それじゃあ、お礼、してもらおっかな」
「ん……なにがいい?」
「歌、歌ってよ」
それは、即答だった。
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