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俺のクラスには、誰も知らない生徒がいる。
教室にいる事なんてほとんどない。
もしかしたら教師だってアイツの存在に気付いてないかも知れない、そんな、空気みたいな奴。
でも、俺は知っている。
何故か俺だけが知っている。
『俺』だけが、『アイツ』を。
初めて知ったのは、入学式の時だ。
堅苦しい式典が嫌いな俺は、何時もの様にそれをサボった。
誰もいない廊下を通って、中庭に続く渡り廊下を歩いている時。
「―――Scelus natum est, somnium mihiorat」
――――うた?
不意に聞こえてきた、歌声に。
歩みを進めていた脚が、自然と止まった。
―――キレイな声。
何も考えれない頭で、それだけが感じられた。
透き通った高い声。
でも女の声じゃない。
でも、男の声にしては、高い。
よく分からない、けど綺麗な声には違いなかった。
「…………うたい、た、い」
トリップした頭に響いた、声。
その声に現実に呼び戻された。
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