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「おぉ、シャルル殿ではないか。
何ゆえ突然この地へ参った?」
「ジョニーに変わって私がフィディック王国の使者になったのですよ。
この落ち着いた語り口はクロウ殿とお見受けしますが?」
「そうかそうか。
いかにもワシはクロウだ。
人間から見れば竜人の判別は困難だからな。
こちらから見てもそれなりに人間の判別は苦労するからその気持ちは分かるぞ?
ただシャルル殿は凄く分かりやすいがな。」
「そうでしょうそうでしょう!
私の際立つ美しさは人間の中でも特別製ですからなっ!
あっはっはっは!」
シャルルは竜人の集団の先頭に居た竜人をクロウと推測し挨拶を始めたが、先の戦いで交わした声質と一致したことで推測を確信に変えて話を進めた。
竜人を見分けるのは人間の目では困難を極めるので、シャルルのこの出方も致し方ない所であった。
竜人も同様に人間を判別するのは大変なのだが、人間の場合は髪や肌、瞳の色など、大まかながらも区分けできるので多少はマシである。
しかし竜人の目から見てもシャルルの容姿は異彩を放っているようで、挨拶を交わすクロウがシャルルにその辺りのことを触れると、シャルルはいつもの勘違い路線へと突っ走ることになってしまったのだった。
しかし人間の容姿の美的感覚など竜人の知る所ではない。
シャルルの容姿は他の人間と区別がつきやすく、そして決死の戦いにおいての勇猛果敢な姿勢と自分達竜人に自然に接していたことが竜人から評価を得ていた。
それは普段無口なクロウの口数の多さと、次々にシャルルに挨拶しようと囲んでくる竜人達の様子からも見て取れる。
ジンは馬の手綱を握り締めたまま、呆気に取られながらシャルルを囲む竜人達を眺めていた。
あのシャルルが人気者のごとく取り囲まれるなんて信じられなかったのだ。
しかし一方で、シャルルの差別なき万民への接し方がよく表れている光景でもあると、妙に納得させられたりもした。
この光景はまるで旧友との再会を懐かしむかの様。
シャルルの人となりと、竜人の人間に対する友好的な姿勢がなしえた光景なのだろうと、ジンは漠然と感じたのだった。
ここまで思い至ったジンは既に呆気から脱却し、口元にうっすらと笑みを浮かべてその光景を暫し楽しんでいた。
「してシャルル殿。
そちらの御仁はどなたかな?」
そんなジンに気付いたクロウがシャルルに尋ねる。
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