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淡々と、冷たく、言葉を吐き捨てるかの如く、感情のない声で、その表情は未だに"憤怒と嫉妬"。
「えぇそうよ。誰にも関係ない。これは私の"意志"。"気持ち"。"想い"。"感情"。"心情"。」
「貴女なに言っ―――」
尋常ならざる咲夜の様子に、霊夢が声を発するが、しかしそれよりも更なる声がそれを遮る。
「そうよ。関係何てないわ。"これ"はあのスキマ妖怪だろうと烏天狗だろうと白黒魔法使いだろうと人形遣いだろうと小さな百鬼夜行だろうと亡霊の姫だろうと天人達だろうと薬剤師だろうと悪戯兎だろ――――――」
壊れたラジオの様に、人物の呼称を言い続ける咲夜。とうとう、霊夢が知らない人里の一般人まで出てきた。
霊夢はついさっき咲夜に"異常"と言ったがそれは間違いだと理解した。
これは"狂気"。狂信にも達する"狂気"。
本当は違う"感情"だったのだろう。それでも、これを以外に何が"狂気"なのだろうか。
「そうよ。関係ないわ。誰にも何にも関係ないの。例え<幻想郷>でも、関係ない。ねぇそうでしょ? 霊夢」
「貴女……」
目の前で"狂気"に喰われた虚ろに輝く咲夜の瞳が、腕と足を拘束されて逃げる事の出来ない霊夢へと向けられた。
一歩。
咲夜が霊夢へ近付く。
それに合わせて下がろうとした霊夢だが、足を拘束されていてはそれも叶わず。
「ねぇ、霊夢……」
また一歩。また一歩。
近付いて来る咲夜に、"自分しか映さない咲夜の瞳"に、霊夢は底知れぬ恐怖を抱く。
最後の一歩。
それで、霊夢と咲夜の距離は後数センチへと縮まった。
霊夢の頬に手をやり、愛しい気に撫でる。
「貴女の時間は」
耳元で甘く、甘い、囁き。
「私だけのモノよね?」
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