その1 自己紹介

8/10
前へ
/39ページ
次へ
「趣味は音楽鑑賞で、得意科目は世界史です。一年間よろしくお願いします」 (パチパチパチ) なんとかスピーチは終了した。 「なぁ、相沢って可愛いよな」 「なぁ」 クラスメート達によって、そんな感じの会話が聞こえてくる。 というか、馴染むのが早すぎるだろう。 * しばらく何人かのスピーチがあり、吉行の番。 「さて次は海田吉行君。よろしく」 この老人は男の子となると、妙にテンションが低くなる。 「オレの名前は海田吉行。好きな食べ物はアジで、趣味は、オンラインゲームだ!」 「だから吉行はパソコンを持ってないでしょ」 「おっと、そうだった」 しかし、この吉行の言葉を聞いて、クラスの空気がみごとに冷たくなってしまった。 「えと、趣味は石集めで、得意科目は体育。勉強は駄目だけど、よろしくな!」 一気に言った。 しかし、拍手が起こらない。 「あれ?」 冷たい空気はすぐには戻らない。 「では次は……木村健太君。よろしく」 「え?俺のことは無視!?」 このクラスに来た先生は、あまりにも無情だった。 「え~と、初めまして」 その声にクラス中の女子、男子は一斉に憧れの眼差しを向けている(一部殺気が目立つ)。 おいぼれのじいさん先生まで、すごい目で見ている。 かなえはちょっと顔を赤くする。 おそらく、さっきの会話を思い出したのだろう。 吉行は、健太のことを自慢するかのように辺りを見回している。 これが噂の友達自慢なのだろう。 そんな中、1人だけ漫画本に熱中している奴がいた。 しかも、○○禁の物を……。 「これは……実に面白い」 小声でそう言った。それは、美奈であった。
/39ページ

最初のコメントを投稿しよう!

32人が本棚に入れています
本棚に追加