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「趣味は音楽鑑賞で、得意科目は世界史です。一年間よろしくお願いします」
(パチパチパチ)
なんとかスピーチは終了した。
「なぁ、相沢って可愛いよな」
「なぁ」
クラスメート達によって、そんな感じの会話が聞こえてくる。
というか、馴染むのが早すぎるだろう。
*
しばらく何人かのスピーチがあり、吉行の番。
「さて次は海田吉行君。よろしく」
この老人は男の子となると、妙にテンションが低くなる。
「オレの名前は海田吉行。好きな食べ物はアジで、趣味は、オンラインゲームだ!」
「だから吉行はパソコンを持ってないでしょ」
「おっと、そうだった」
しかし、この吉行の言葉を聞いて、クラスの空気がみごとに冷たくなってしまった。
「えと、趣味は石集めで、得意科目は体育。勉強は駄目だけど、よろしくな!」
一気に言った。
しかし、拍手が起こらない。
「あれ?」
冷たい空気はすぐには戻らない。
「では次は……木村健太君。よろしく」
「え?俺のことは無視!?」
このクラスに来た先生は、あまりにも無情だった。
「え~と、初めまして」
その声にクラス中の女子、男子は一斉に憧れの眼差しを向けている(一部殺気が目立つ)。
おいぼれのじいさん先生まで、すごい目で見ている。
かなえはちょっと顔を赤くする。
おそらく、さっきの会話を思い出したのだろう。
吉行は、健太のことを自慢するかのように辺りを見回している。
これが噂の友達自慢なのだろう。
そんな中、1人だけ漫画本に熱中している奴がいた。
しかも、○○禁の物を……。
「これは……実に面白い」
小声でそう言った。それは、美奈であった。
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