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「かわいいな!」
辰が俺にそう言った。俺はそんなこと考えられなかったので、あえて何も言わない。その小さな竜は俺たちを、もしかしたら食おうとしてるかもしれない。こんなに小さいからって竜は竜だ。俺たちをどうこうするのはたやすいだろう。その竜はきょとんとしながら、杖を持っている俺の方を向いた。
「あなたが選ばれたんですね」
竜が言葉を話した。もともと俺は竜を見たこともなかったから、竜の常識はない。俺はそいつを見ながら震えていた。すると辰がこう言った。
「あ、今鳴いた~」
鳴いた? 俺は一瞬頭の中に疑問符が過ぎった。そして俺は辰に聞いた。
「え、鳴いた? 今こいつ話したよ!」
俺はまだ狼狽しているようだ。すると辰がこう言った。
「優翔やっぱ壊れたな。こいつは鳴いたんだ、しゃべってない」
そう言うと、そいつに人差し指を近づけてこう言った。
「そうだよな~」
「違います…」
そいつは辰の人差し指につられながら、そう俺たちに言った。すると辰がこう言った。
「あー、また鳴いた~。こいつかわいいな~」
かわいい? 俺にはただの猛獣にしか見えない。するとそいつが、俺にこう言った。
「もうじれったいですね。その杖をその人にさわらせてください」
俺はそれを聞くと、辰に話そうとした。しかし辰は再びこう言った。
「わー、もっと鳴けー」
そいつの頭の上に、怒りマークが出てきそうだった。俺はそれを見ると、辰にこう言った。
「辰、ちょっとこれ触ってみて」
辰はそれを聞くと、俺の方に一回視線を寄せた。そしてこの杖を触らせた。するとそいつがこう言った。
「僕は鳴いてません」
それを聞いた辰は、一瞬耳を疑ったのかそいつにこう言った。
「え…、今しゃべった?」
「はい、喋ってます」
そいつは間髪入れずにそう答えた。すると辰は、さらに顔を微笑ませた。
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