孵化

6/10
前へ
/631ページ
次へ
「しょうがないな…」 俺はそう言うと、そいつにこう聞いた。 「これの使い方を教えてくれるかな。後君の名前も」 するとそいつは、杖を指差した。そして俺にこう言った。 「まずその杖を前につきだしてください」 俺はぎこちなく、杖を前に突きだしてこう言った。 「こう?」 するとそいつは頷いた。そして続けてこう言った。 「そして、使いたい紋章を思い浮かべるんです。そしてその紋章の名前を言うんです」 俺はそこでそいつにストップをかけた。 「ちょっとまった、俺その紋章知らないし、名前も知らないよ」 するとそいつは少しだけため息をする。そして俺にこう言った。 「その杖を持っていれば、何とか分かると思うんですけど…」 俺はそうなの…、と弱々しく言うと、そいつにこう言った。 「分かった。目はつぶった方がいい?」 すると辰がこう言った。 「つぶった方が雰囲気いいぞ。カメラにはぴったりだな」 そして何処から取り出したのか、一眼のカメラを構えていた。俺はそれを聞くと、少しだけ苦笑いをした。するとそいつもこう言った。 「目をつぶった方が、確かにイメージしやすいでしょう」 そう言うと、俺にさぁさぁと言わんばかりの視線を送った。俺は少しだけため息をつくと、目をつぶった。 そこに見えたのは、殺風景な世界のようだ。ほとんど真っ暗な中に何かが輝いている。それはよく見ると、杖の先に付いている三角形を二つ重ねたような模様。名前は、フレア。何故か頭の中にその名前が浮かんだ。俺はそれを思い浮かべると、目を開けた。そしてこう言った。 「フレア!」 何も起こらなかった。 「あれ…」 俺はそう言うと、カメラを構えていた辰がこう言った。 「お前期待させといて何なんだよ」 するとそいつが、何かを思い出したような顔をして俺にこう言った。 「あ! すみません言い忘れてたことがあります。使う前にマナを杖に込めなきゃいけないんでした」 そいつは自分の頭を自分で軽くごついた。
/631ページ

最初のコメントを投稿しよう!

572人が本棚に入れています
本棚に追加