孵化

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風の紋章、確かまず一番始めに集めろと言われた紋章だ。 「え…、俺まだやっと火がでるくらいなんだけど…」 弱々しくそう言うと、そいつはこう言った。 「でも紋章はあなたの都合にはあわせてくれません。今を逃したらいつあえるか分からないですよ」 絶望的だ。俺はそう思うと、絶望ついでに辰がこう言った。 「それに、このチャンスだ。しっかりカメラにお前の雄姿を納めてやるよ」 絶望的だ。俺はそう思ったが、後には引けない。そんな感じもした。俺はそいつに聞いた。 「どこだ?」 するとそいつはこう言った。 「この建物の屋上です」 そう言うと、俺は了解してこう言った。 「行くしかないんだろうな」 そいつらは首を縦に振った。そして俺は屋上に向かった。 杖を持った姿はやはり少し目立つ。俺は階段を上りながらそう思った。しかしそんなのかまっていられないとも、俺は感じた。そしてこの寮の一年で、一番始めに屋上に行った。 屋上は鍵がかかっておらず、簡単にだれでも出入りできるようになっていた。屋上に行ってみると、そこはいつもなら綺麗に整っていそうな段ボール群が、無惨な形で転がっていた。中にはペンキなんかもある。 「ヒドいな」 辰はそう言うと、屋上の写真を一枚カメラに収めた。そして俺は辺りを見回す。風の紋章は透明なはずなのだが、塵を含んで灰色っぽく竜巻のように見える。 「あれです!」 そいつはその竜巻の方を指さした。小さな竜巻が風の紋章らしい。俺はそれを確認すると、こう小さく言った。 「あれか」 すると辰が、一回カメラを小さな竜巻の方に向け、シャッターを押した。
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