572人が本棚に入れています
本棚に追加
風の紋章、確かまず一番始めに集めろと言われた紋章だ。
「え…、俺まだやっと火がでるくらいなんだけど…」
弱々しくそう言うと、そいつはこう言った。
「でも紋章はあなたの都合にはあわせてくれません。今を逃したらいつあえるか分からないですよ」
絶望的だ。俺はそう思うと、絶望ついでに辰がこう言った。
「それに、このチャンスだ。しっかりカメラにお前の雄姿を納めてやるよ」
絶望的だ。俺はそう思ったが、後には引けない。そんな感じもした。俺はそいつに聞いた。
「どこだ?」
するとそいつはこう言った。
「この建物の屋上です」
そう言うと、俺は了解してこう言った。
「行くしかないんだろうな」
そいつらは首を縦に振った。そして俺は屋上に向かった。
杖を持った姿はやはり少し目立つ。俺は階段を上りながらそう思った。しかしそんなのかまっていられないとも、俺は感じた。そしてこの寮の一年で、一番始めに屋上に行った。
屋上は鍵がかかっておらず、簡単にだれでも出入りできるようになっていた。屋上に行ってみると、そこはいつもなら綺麗に整っていそうな段ボール群が、無惨な形で転がっていた。中にはペンキなんかもある。
「ヒドいな」
辰はそう言うと、屋上の写真を一枚カメラに収めた。そして俺は辺りを見回す。風の紋章は透明なはずなのだが、塵を含んで灰色っぽく竜巻のように見える。
「あれです!」
そいつはその竜巻の方を指さした。小さな竜巻が風の紋章らしい。俺はそれを確認すると、こう小さく言った。
「あれか」
すると辰が、一回カメラを小さな竜巻の方に向け、シャッターを押した。
最初のコメントを投稿しよう!