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するとその六芒星の中央に、どんどんその炎ごと紋章が引き込まれていった。そして引き込まれていくごとに、その紋章の全貌が分かる。風の紋章は風の波をかたどった、曲線が三つ並んだ模様だった。そして足下の魔法陣が神々しく輝き、その杖に引き込まれていった。光が消えたのだ。
「やりましたね!」
そいつはそう言うと、俺の方に笑顔で向かっていった。俺もそいつを見て、達成感を露わにした笑顔を見せた。
「うん、この紋章はポネンテっていうんだ」
すると未だにシャッターを押し続けている辰が、俺に近づきこう言った。
「最高だったぜ、あんなにど迫力の写真撮ったの初めてだ!」
そう言うと、俺に笑顔を見せた。そしてこう続けた。
「次紋章を封印するときは、俺を呼んでくれよな」
するとそいつが、少し厳しい顔をしてこう言った。
「だめですよ! 紋章収集に他人は巻き込めません!」
すると辰は、そいつの肩をたたきながらこう言った。
「まぁそんなに堅いこと言うなって」
いかにも気楽そうだった。俺はそれを見ると、そいつにこう言った。
「そういえば、君の名前は?」
俺はそう聞くと、そいつははっきりこう言った。
「まだ僕生まれたばっかりなんで、名前は持ってません」
そう言うと、少し寂しそうな顔をした。俺はそれを見て少し悩むと、ぽっとひらめいた。
「…アルト、何てどうかな?」
するとそいつははっとなって、俺の方に顔を寄せた。
「僕の…名前ですか?」
俺はゆっくり頷いた。するとアルトは、笑いながら俺に飛び込んできた。俺はアルトにこう言った。
「ハッピーバースデー、アルト」
そのときシャッターが、優しく切られた。
「見つけました、寮の屋上です。どうやらこの寮の生徒らしいです」
誰かが、俺たちを見ながらそう言っていた。すると携帯電話から、小さな声が聞こえてきた。するとその人物は何かを了承したように軽く頷くと、こう携帯電話に言った。
「分かりました。それでは強奪します」
劉の杖を。
その人物はそう言うと、携帯電話を切った。
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