孵化

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「…と言う訳なんだ」 俺は辰にその事を話すと、辰は信じてくれたようで俺にこう言った。 「なるほどな。それはやっぱり魔法陣じゃないか?」 魔法陣、俺はその言葉をゲームや小説の中だけの話かと思っていた。しかしそうでもないようだ。俺は辰にこう言った。 「じゃぁこの卵は何の卵だろう」 辰は頭をひねった。そして結局俺にこう言った。 「知らない」 俺も分からない。何なんだろうこの卵は。俺はそう思うと、その卵を軽くデコピンした。 するといきなりその卵が、俺がデコピンした所から亀裂が入った。俺は驚いてしまった。 「うわ! どうしよう! わわわ割れた!」 「慌てるな! 落ち着け…、落ち着くんだ」 「そんなこと言われても…!」 俺がそうあわてている間にも、その卵はどんどんひびを殻にのばしている。俺は狼狽し、辰がそれを一生懸命抑えている。その間に、もう殻のほとんどがひび割れていて、何処が崩れてももうおかしくはなかった。 そしてついに、卵が割れた。俺は目をつぶりたかったがそんな勇気はなく、ただただその卵を見張っていた。そして卵が崩れ、中から爬虫類のような鱗がある赤い尻尾が出てきた。そしてさらに、ちいさくかわいい鉤爪と、これまたかわいい小さな赤いコウモリのような翼が覗いた。 「あ…」 もうおしまいだ。俺は心の中でそうつぶやいた。隣で興味津々とその卵をみる辰の気が知れない。そしてついに、その全貌が明らかになった。 そいつは赤い小さな竜だった。
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