572人が本棚に入れています
本棚に追加
「…と言う訳なんだ」
俺は辰にその事を話すと、辰は信じてくれたようで俺にこう言った。
「なるほどな。それはやっぱり魔法陣じゃないか?」
魔法陣、俺はその言葉をゲームや小説の中だけの話かと思っていた。しかしそうでもないようだ。俺は辰にこう言った。
「じゃぁこの卵は何の卵だろう」
辰は頭をひねった。そして結局俺にこう言った。
「知らない」
俺も分からない。何なんだろうこの卵は。俺はそう思うと、その卵を軽くデコピンした。
するといきなりその卵が、俺がデコピンした所から亀裂が入った。俺は驚いてしまった。
「うわ! どうしよう! わわわ割れた!」
「慌てるな! 落ち着け…、落ち着くんだ」
「そんなこと言われても…!」
俺がそうあわてている間にも、その卵はどんどんひびを殻にのばしている。俺は狼狽し、辰がそれを一生懸命抑えている。その間に、もう殻のほとんどがひび割れていて、何処が崩れてももうおかしくはなかった。
そしてついに、卵が割れた。俺は目をつぶりたかったがそんな勇気はなく、ただただその卵を見張っていた。そして卵が崩れ、中から爬虫類のような鱗がある赤い尻尾が出てきた。そしてさらに、ちいさくかわいい鉤爪と、これまたかわいい小さな赤いコウモリのような翼が覗いた。
「あ…」
もうおしまいだ。俺は心の中でそうつぶやいた。隣で興味津々とその卵をみる辰の気が知れない。そしてついに、その全貌が明らかになった。
そいつは赤い小さな竜だった。
最初のコメントを投稿しよう!