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空の匣にようこそ!
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ユウレイそのものよりも、見えているモノが“真実”でないと解った時の方が怖かった。
幼い頃から当たり前のように俺の世界を闊歩していた彼らが、実は誰の目にも映らない連中なのだと知らされた時は、本気で眼球を潰そうかと悩んだほどに恐ろしかったのを今でも明瞭に覚えている。
虚言癖があると周りから避けられ、孤立し、後一歩でユウレイとやらの仲間入りを果たす間際に、俺は彼女と出逢ったのだ。
『譲原薫<ユズハラカオル>』。金属バッドを片手に持つ業界最強、現役女子高生退魔師であり、後(ノチ)の俺の師匠である。
「キミだけが特別なわけないじゃん。調子乗んなくそガキ!」
開口一番浴びせられた罵声はいつでも再生可能なほどに、深く胸に染み込んでいる。
とにかくメチャクチャな人だった。
――でも確かに、俺はその一言に救われたのだ。
薫姉からはありとあらゆることを叩き込まれた。死者と生者の区別から家事、勉強、護身術や武道の類、極めつけには自慰の仕方まで。
とにかく一人で生きる術を徹底的に教わった。
そして師匠と出逢ってから四年という月日が経ち、高校入学を間近に控えた頃、大きな武家屋敷と僅かな書き置き、それから“とんでもないモノ”を残して、薫姉は姿を眩ました。
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