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そっと唇を離すと強気な口調で、だけど視線を合わせないで言葉を向ける。
「これで…満足?」
「物足りないって言ったら?」
いたずらに笑う橘。
なっ!
「絶対イヤ!じゃあ私帰るから!」
そう言って図書室を飛び出した。
時間を見ればたった5分しか経っていない。
それなのにいろんなことがありすぎて図書室に入って1時間くらい経っているような気がした。
私、また橘と……
まだ唇に残る感触。
指でそっと触れると熱を帯びていてその熱が指先から全身へと伝わっていく。
こんなにドキドキするのは怒りのせい?
走ってるせい?
それとも……
ちがう!絶対に…
認めたくなくて、許したくなくて、その感情を必死でかき消す。
あいつだって私をからかってるだけだ。
騙されちゃだめ。
もう二度と傷つきたくないから。
だけど――…
この頃から確実に私の中で何かが変化し始めていた。
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